【感想】『夢介千両みやげ』『Sensational!』(2022・雪組・東京宝塚劇場)

2023/03/20 旧ブログより移転

『夢介千両みやげ』公演概要

人好し、お節介な心優しき青年・夢介の活躍を描く傑作小説を、痛快娯楽時代劇として宝塚歌劇で舞台化致します。
小田原・庄屋の息子・夢介は、父親から“通人”となるため千両を使っての道楽修行を言い渡され江戸へ向かう。道中、“オランダお銀”と呼ばれる女スリに懐を狙われる夢介だったが、夢介の朴訥で底抜けな優しさに触れたお銀は一目惚れ、押しかけ女房となり二人は江戸で奇妙な同棲生活を始める。夢介に相応しい善い女房になろうと努力するも元来気性の激しさを抑えきれないお銀。遊び人飛脚屋の若旦那・伊勢屋総太郎ら個性豊かな江戸の人々が巻き起こす騒動を、夢介は“金と優しさ”で解決して行く。
善意の塊のような夢介との出会いが人々にもたらすものとは、そして夢介の道楽修行の結末は?
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/yumesukesenryoumiyage/index.htmlより引用

『夢介千両みやげ』感想

東宝のチケを3枚確保していたのですが、1枚おじゃんになってしまいました。無念。

和物ということで、あまり得意ではないかも……と初日前は思っていました。蓋を開けてみるとムラで先に観劇された方たちからの評判がとてもよく、また何も考えず楽しめるコメディとのことだったので、期待値はかなり上がっていました。登場人物がコミカルで、時代劇に寄せすぎていないキャラクター造形が親しみやすく面白い演目でした。

以下、今回公演プログラムを買い忘れてしまったのでうろ覚えで……。

幕が開くと咲ちゃん(彩風咲奈)がせりあがってきて自己紹介、からのオープニングナンバーで盛り上がります。舞台後方にきわちゃん(朝月希和)がしゃんと立っていて、自己紹介ソングを歌い継ぎます。きわちゃんのお銀さんは、「娘盛りも知らぬまま~」と歌う通り、御救小屋で育ち暗い過去を持っていたことは感じられるのですが、それを過剰に匂わせない演技が好みだと感じました。これはソラカズキの演じる三太も同様で、彼ら彼女らの一人の人間であり同情や憐憫を受け取らない姿勢が、夢介の衒いのない優しさを外側から形作っているように思えます。

「惚れちゃったのさ~♪」の歌もかわいいですよね!最初は銀橋を渡りながら1人で歌うのに、後半に差し掛かる場面ではデュエットしながら歌うのでさらにグッときます。特に2回目のデュエットの時は、「夢さんもしっっっかりお銀さんに惚れてるんだなあ……」と幸せな気持ちでいっぱいになります。歌劇か何かで咲ちゃんが「夢介は最初からお銀さんをかわいいなと思ってる(意訳)」と言っていた通りで、心優しい夢介ではありますが、女性に言い寄られてもきっぱりと断ることができる強さは持っています。押しかけ女房を制止しなかったのは、お銀を真人間にしたいだけではなく、夢介自身がお銀に惹かれていたからなんだろうなと……。

あがたくん(縣千)の演じる金の字は着流しが似合います。肩幅や体の厚み、雑に動いたときに見える足の筋肉などがリアル男性的でよく映えるのと、雪組に同じ系統の男役さんがいないのでぱっと目を引きます。

あと特に気になったのが、何といっても妃華ゆきのさん演じる浜次!夢介に泣きつく演技はいかにもわざとらしく、それでいてメンチを切るところでは威勢よく、お銀に挨拶に来るところなんて嫌味ったらしいマウントの取り方と潔く手を引く美しさなど、どれも江戸時代に本当にこんな女性がいたかも、と思わせる演技で見惚れました。
あと滑舌が良くて台詞がすっごく聞き取りやすい!『CITY HUNTER』や『Sweet Little Rock'n Roll』を観たときにはお名前を知らなかったので、これからウォッチしていきたいです。

愛すみれさんには『ほんものの魔法使』『Sweet Little Rock'n Roll』ともにコミカルなお芝居で魅了されてしまっていましたが、今回は春駒太夫という気の強く大人な女性で、これもまた大好きになりました。本当に何をやっても似合うのですごい。浜次・春駒・お銀の3人で夢介を囲んで歌う場面なんかも、愛すみれさんウォッチャーと化していました。お糸ちゃんに優しいのもいいですよね。

朝美さん(朝美絢)演じる総太郎は、現実にいようものならどうしようもないカス野郎。ただそのカス野郎を上手く現実からずらして、コミカルでかわいらしくデフォルメして演じているのがとても魅力的でした。なんせあの顔あの(以下略)。ほんまほ以降、朝美さんとひまりちゃん(野々花ひまり)の組み合わせに惹かれがちなので、今回もうまくハッピーエンドで終わってよかったです。
それにしても組長・副組長の演じる伊勢屋のご夫婦の演技が、「確かにこんなダメ息子になっちゃうかも……」と絶妙に感じさせる親バカ具合で唸りました。総太郎に結婚が決まった時の浮かれ方もかわいかったです。

汝鳥さん(汝鳥伶)の演じる嘉平は、なんだか『婆娑羅の玄孫』で観たぞ…(笑)という既視感。今回もぼっちゃん大好き心配性のじいやで、憎めないまっすぐな愛らしさがあります。


『銀ちゃんの恋』を観劇したり『幽霊刑事』をスカステで拝見したときは、正直石田先生のお話はどちらかというと苦手かも、と感じたりしていたのですが……。全体的に駆け足であることは否めないものの、たくさん人物が出てきてわちゃわちゃしているお話は好きなので楽しめました。

『Sensational!』感想

全体的にギラギラでかっこいい感じのショーです。戦隊ものと言われる()冒頭のテンションの上がりよう……!男役と娘役の並び具合でなぜか『モアー・ダンディズム!』を思い出したり、そういう宝塚らしさがしっかりありつつ、夢介では隠されていた咲ちゃんの都会的な魅力(と、長い長い脚!!)を存分に味わえます。

プロローグのあと銀橋に咲ちゃんがひとり残って歌う曲はまた雰囲気が違って、素朴な愛の歌といった趣でとても好きです。
そのあと舞台真ん中に現れるのはあがたくん!!改めて、あがたくんってショースターだなあとしみじみ感じます。踊っているときに、K-POPとかでいう表情管理(?)が完璧で、はっきりした目鼻立ちでくるくると色んな表情に変わるのでついオペラグラスで追ってしまう存在です。あと、後ろに下がった時でも本当に楽しそうに踊るので見ているこっちがわくわくします。生命力に溢れとる……。

意外と言うか順当と言うか、今回から諏訪さきくんがよく目立っていたような……!あみちゃん(彩海せら)の組替えに際して、空いたポジションに収まったと言えばそうかもしれませんが、とにかく歌も踊りも器用にこなして渋いカッコよさがあります。
まず冒頭の順番に銀橋渡るやつでもメンバーにいましたね。中盤ごろに、オケピからすっと出てきて銀橋でワンフレーズ歌い、組長・副組長と合流して3人になる場面では色気満載でした。副組長と組んで踊っても学年差を感じさせない落ち着きがあって、見ていて安心できる職人的存在です。あと顎がしっかりある人が好きなので顔が好きです

それから、組替え1作目のソラカズキ。これがとんでもないオペラグラス泥棒で(失礼)、ソラカズキが舞台に登場すると周りのオペラがサッッッ!!!と上がる上がる……。歌っても踊っても芝居させても何させてもべらぼうに上手く、まだこちらとしても雪組の和希そらを見慣れていないので良い意味で新鮮さがありました。
オーロラっぽい場面(?)の前に、ベージュ色の衣装で出てきてけっこう激しめに踊るのですが、初めて見たときは裸足で踊っているのかと思ってびっくりしました。それくらい伸び伸びと踊っているように見えて……。咲ちゃんと2人で踊っているときも、2人ともタイプが違うので2倍おいしい!って感じで眼福です。

今作で退団するあやなちゃん(綾凰華)。銀橋でのソロはご自身で作詞されたということで、まっすぐな歌詞が胸に沁みます。星組雪組を歌詞にちりばめ、ファンの方への感謝を告げてこれからの未来へ希望を抱くような歌詞で、とっても素敵でした。あやなちゃんのかっこよさって男らしいというよりまさに「男装の麗人」というような、男性には表現し得ない美しさがあるところだと思っていて、しっかり「男役・綾凰華」を見納めしてきました。
余談ですが私は『PR×PRINCE』のヴァレンティン王子が大大好きなので、あんな感じの王子様!って衣装を最後に観たかったな~と思っていたところ、今月号のGRAPHのサヨナラポートレートがザ・理想の白軍服で最高でした。ありがとう宝塚歌劇団……。

中村一徳先生演出と言うことで、今回も若手がギャンギャンに銀橋を渡りまくってくれるのですが、雪組の若手をまだまだ知らないのでもっと勉強していきたいところです。

近況

*以下ただの私記です。

なんとバタバタしている間に更新が5か月ぶりという事態に……。
しかもオタクをしていなかったわけではなくて、全然ヅカ沼に浸かっていました。最後の記事がロマ劇ですが、あれから『Sweet Little Rock'n Roll』『TOP HAT』『Rain on Neptune』は現地で観劇し、『冬霞の巴里』はチケットが手に入らなかったので配信で。歌劇やGRAPHも欠かさず購入していたのですが、観劇の余韻に浸りながらゆっくりブログを書く時間が取れませんでした……。

というのも、今回から東京宝塚劇場……とあるように、大阪から引っ越しました。初めての一人暮らし、初めての社会人生活と慣れない諸々が襲ってきて謎のストレスで若干ハゲたりしました。悲しい。
東宝もいいんですが、やっぱりムラの広々とした空間が恋しくなります。GWは帰省していて母とめぐ会いを観劇予定でしたがまさかの公演中止で。その前のネバセイも手持ちチケットが軒並み吹っ飛んでしまって観られなかったので、久しく宝塚市に足を踏み入れていません。
東宝組の方、これからなにとぞよろしくお願いします……(?)

夢介1回目は勤後ダッシュで有楽町に向かい立ち見で観劇したのですが、足が棒になりました。オタクにそんな体力はなかったし、2時間半パンプスで立ちっぱなしは寿命が縮むという学びを得ました。

ちょっと日が経っていて記憶があやふやですが、つぎはレイネプの感想も書こうかなあと思ったり……。今週末は『FLY WITH ME』『ガイズ&ドールズ』と幸せいっぱいの予定なので、平日中に上げたいです。